どうしてあなたは「YES」と答えてくれないのだろう。いつになったらぼくはあなたがあなたであり、それはあなたでしかないということに驚かないで済むようになれるのだろう。



 と、こうしていろいろと思い悩むことはあっても、それを言葉であらわしてみたところで、それだけではどうしても及ばない一点がそこにはあるように思う。書くということは所詮つねに出し遅れた自己弁護みたいなもので、それが整理されたかたちで把握されていればいるほど、いよいよ嫌味になるだけである。穿った見方をすれば、ある対象を把握したいという希求は、要するにその対象を支配したいという権力欲の発現にほかならないのだろう。それは人間の暗い一面であると思う。



 「なぜ書かないのか、とあなた方はいうだろう。だってなぜ書くのだ、とわたしは答える。自分の享楽したことを他人に語るためになぜ現在の楽しみを失うのだ」(ルソー)



 Sさんはようやくはじめての彼氏ができたらしい。二十歳になるまで一度も男と付き合ったことがないというのだから、なかなか珍しい。それもああして容姿はいいし性格も明るいのだから、なおのことである。しかし、男が出来たことで彼女の容姿や性格の上に妙な変化があらわれるとしたら、それはそれでなんとなく嫌な感じがする。こういうのはぼくの勝手なのだろうか。
 それにしても、彼女がこうして上首尾にいっているのは、クリスマスのおかげだろうか。資本主義にも夢がある。



 で、たいして栄えているわけでもないのに、年々駅前のイルミネーションに力が入れられているような気がする。週末でも十二時を過ぎればほとんど出歩いている人などいないのに。



 炎はひとを幻惑させる。帰り道、偶然近所の納屋(?)が燃えている場面に遭遇した。すでに数人のひとがまわりを取り囲んでいて、ぼくもその集団にまじってしばらくのあいだ燃えかさる炎を眺めていたが、どういうわけか神秘的な気分に包まれてしまった。また、消防車が来てから火が消されるまでのそのスピードの速さにも驚かされた。おそらくボヤ程度の騒ぎだったのだろう。
 炎をひとを幻惑させる。放火犯のなかにはそのためだけの理由に火を放ったひともいるはずである。



 美容院とキャバクラは、どこか似ている。こう思うのはそのシステムのせいだろうか?