F駅前では週末ともなるとフォークライブがさかんにおこなわれる。どいつもこいつもひどい代物で、こちらの琴線にひびくような音にはまずめぐりあえない。おそるべき子供たち。君たちのその勇気が明日をひらく糧になるはずである。
 おそるべき子供たちで思い出したが、ジェリー・バトラーが「For Your Precious Love」を録音したとき、かれはまだ十代であった。これこそまさに恐るべき事実で、もしこんな少年が駅前で熱唱しているのを耳にしたら、すぐさまぼくはパーカー大佐を名乗り出るつもりである。



 まだ梅雨前ではあるが、夏場にむけて各食品メーカーから激辛商品がぼつぼつ出始めている。ひととおり試してみるのは辛いもの好きを自認している以上当然の責務である。だが、その手のものはたいてい大して辛くないし、本当に辛いものとなるともはや劇薬の一種であって、そういったものは正直にパッケージ上にドクロマークをつけておくべきである。
 刺激物がないと食欲がわかないというのは、セクシャルな例を参照するまでもなく、いくらか倒錯的であるにちがいない。



 電車の向かいに座った男子高生が熱心にニーチェを読んでいた。おそるべき子供たち。君だけではない、そうしてみんな凡庸な大人になってゆくのだ。