眠りは深い目覚めに似て、仰向けに横たわる身体の、ひたむきな重みの感覚に伴われていた。その上を雨がひっきりなしに走り、沢の響きが高くなり低くなり、音色と方向がたえず微妙に変わるのも、聞こえていた。



 まったく同じスタイルの微風が三日つづく。(瀧口修造
 というわけで、この三日間、同じ服装、同じ表情、同じ歩幅で、朝には坂道を下り、夕方になればその同じ坂道をのぼってくる、これが円満具足の日常か。



 睡眠時間がどれくらいだったか、そんなことを意識してしまうと、それによって疲労感が欺かれてしまうことがある。量よりも質、肝心なのは、規則正しい生活によって心身のバランスを保つということになるだろう。



 Sからだしぬけに「飯をおごりますよ」と言われ、なにか面倒な話でも持ち上がったか、と一瞬いぶかったが、そのときはぼくの都合が悪かったため、そのまま話は流れてしまった。
 一方、Mは「ケーキが食べたい」と、さもおごれと言わんばかりの調子で迫ってくる。しかしぼくになんの義理があるのだろう。上着を脱がせようと手を伸ばすたび、きまってあしらうような微笑を浮かべて、ひらりと身をよじるくせに。