ずっと室内にいたのでよくはわからないが、話によると今日は快晴の一日だったそうである。事務所の蒸し暑さにTが何度となく悲鳴を上げていた。ぼくは新陳代謝がよくないのか、普段からあまり汗をかかない体質なので、そう言われるまで室温のことなどとくに気にもとめなかった。汗かきのひとは思わぬところで感電死したりしないのだろうか。



 大人の言いなりになってはいけない。権威のある人間に追従してはいけない。コクトー風に言えば、若者はみずから安全な株を買うようなことがあってはならない、というわけだ。
 コクトーはいざ知らず、ぼくの経験では、若者にむかってこのようなお説教をするひとは、だいたいが冴えない大人にかぎるのだ。そこには、自分が権威と無縁であることに対するなにか心理の屈折のようなものが潜んでいるように思えてならない。そのメッセージの是非について、ぼくは問わない。そういったことは各自が自分なりに考えればいいだけのことであって、どんな高尚な議論も口に出すことによって急激に色褪せてしまうといった事態は、これだけにかぎらずさまざまな場面で起こりうるものなのだ。



 「遠いものを近くに、近いものを遠くに」と西脇順三郎は言った。いわば詩の公式である。
 住宅地のど真ん中にあるキャンプ場。
 実現された詩はいつもどこかしら醜悪だ。