どういうわけか、お金が足りない。ジリ貧どころか、計算上ではすでに今月の破産が決定的である。といっても、ぼくのように社会的責任を持たない気ままなシングル・ライフを送っているひとならば、いくらでもやりくりの手段はあるわけで、危機感といったようなものはまったくない。しかしこういうしがらみの少ない生活というのも、いいところがある反面そうでもないところもあって、もしも、お前はたんに生活設計がなってないだけではないか、と迫られても、返すべき言葉をぼくは持たない。



 Aと一緒にショッピング。ぼくは靴と洋服と本と椅子を買った。全部あわせるとさすがに結構な量である。ショッピングをストレスの解消に利用するひともあるようだが、何となくその心理が分かるような気がした。
 なるほど、どうりでお金が足りなくなるわけだ。



 さいきん気になる単語……「悩殺」



 恥をしのんでケーキ屋の娘に声をかけたら、見事に玉砕してしまった。なんでも二月でこの仕事を辞めて、四月からは神奈川の方で働くことになっているらしく、いまはそれどころではないとのことである。間近で見たら、予想していた以上に可愛くて、誘いを断られていながら、本当に好きになってしまいそうだった。



 フェチについて話を採集してきた。Nくんは「手」、Sさんは「体臭」、Hは「髪の毛」、Tくんは「尻」。しかしぼくの読みでは、このうちの数人は本心を隠しているのではないかと思わせるふしがあった。あるいは、本来は特異な自分の嗜好を、すでに規格化されたアイテムにあてはめることで解消させているのではないかと疑いたくなるところが少なからずあった。ちなみに、ぼくは上の四つならば、「体臭」以外のいずれにも同等に惹かれるものがある。