風邪をひいたようなので、
前々から噂に聞いていた「鼻うがい」を試みる。
これはずいぶんとエグいものである。
何が悲しくてこんなことをしているのだろうかと、
少々辟易する。
たかだか風邪である、放っておけばそれでいいのである。
放っておいても、せいぜい七日もすれば直る。
もしも、悪化して長引いたとしても、
一週間もすれば直ってしまうものなのである。



Yとは驚くべきことに20年以上の付き合いである。
しかし、よくよく考えてみると、
ぼくがYについて知っていることはごく僅かにすぎない。
そのうえ、その「知っていること」も、
ただのぼくの錯覚なのかもしれないのである。


家族、友人、恋人、仕事の付き合い等など、
あらゆる人間関係において、
ぼくは常に何かとりかえしのつかない錯覚を
犯しているような気がしてならない。
同様に、ぼくの周りのひとたちも、
ぼくについて何か深刻な誤解を抱いているのではないかと、
ぼくは疑っている。あるいは、その疑いこそが、
まさに錯覚であるのかもしれないのだが。